曙ブレーキ工業と事業再生ADRの研究#1

 

1.さて

さて、前回のポストの通り卒論は曙ブレーキ工業の企業分析と事業再生ADRのことについて書くことになりました。
とりあえず今は曙ブレーキ工業ADR申請に至った経緯を改めて探るため財務の追跡と業界の分析等を行っています。

それが終わったら、
事業再生ADRについて概要をまとめる
②その他の法的整理・私的整理との違いを整理
③ ②を踏まえて事業再生ADRの利点や問題点を探る
事業再生ADR(というか私的整理全般になるか?)に対する自分の意見をまとめる

(文字数足りなかったら)
曙ブレーキ工業の今後の事業展開や方策に対する提言をまとめる

こんなところかな。このブログは卒論執筆や発表用パワポの下書きのような感じで使っていくつもりです。

2.曙ブレーキ工業とはどういう企業なのか

 akebonoブレーキグループは各種ブレーキおよびその構成部品・関連部品の製造・販売・研究開発を行っています。

 事業内容|事業概要|企業情報|曙ブレーキ工業株式会社

 

曙ブレーキ工業はその名の通り、自動車や新幹線に使われるブレーキの専門メーカーで1929年に設立されました。

自動車用ブレーキ(ディスクブレーキ・ドラムブレーキ)

自動車部品メーカーは完成車メーカー(TOYOTA・HONDAとかですね)の系列企業か独立系の企業に分かれますが、曙ブレーキ工業TOYOTA筆頭株主ではあるものの独立系とされています。
主な部品供給先はトヨタ・日産・GM等多くの企業へ部品供給を行っています。これがTOYOTA筆頭株主であるにもかかわらず系列系とされない理由ですね。

新幹線用ブレーキ

曙ブレーキ工業は新幹線用のブレーキについて新幹線開業当時から高いシェアを誇っています。

3.どのような経緯でADRに至ったか

 1月29日、曙ブレーキ工業(株)(TSR企業コード:290001102、東証1部)は事業再生ADRを申請した。米国自動車メーカーのセダン撤退や2014年の生産混乱に起因したゼネラル・モーターズGM)の次期モデル向けブレーキ製品の失注などで業績が悪化していた。
 30日、曙ブレーキ工業の担当者は東京商工リサーチの取材に応じ、「取引金融機関に29日付で(金融債務返済の)一時停止を通知した。通知した国内金融機関は30行以上にのぼる」とコメントした。
 今後の資金繰りは、「調達先や金額などは答えられないが、DIPファイナンスを受ける予定で当面の資金繰りに問題はない」という。また、法的手続への移行の可能性については、「事業再生ADRのとん挫は想定していない」として、「可能性の話は答えられない」(曙ブレーキ工業の担当者)と述べた。
 曙ブレーキ工業は、決算短信に「継続企業の前提に関する重要事象」が記載され、動向が注目されていた。

曙ブレーキ工業が事業再生ADRを申請、「取引金融機関は30行以上」 : 東京商工リサーチ

 

簡単にまとめると

「北米での事業の失敗が原因で(今後)支払いの行き詰まりが予測されるためADRを申請した」ということですね。

4.財務分析

はい、みんな大好き財務分析の時間です。とりあえず増減分析やら利益率系の項目からやっていきます。分析に用いた財務データは公式HPからもってきました。
公式HPで10年分の結構広い範囲かつセグメント別の財務データをEXCELファイルでDLできるのはとても有り難いですね。ポイント高いです(何様)

財務・業績|株主・投資家の皆様へ|曙ブレーキ工業株式会社

 

利益率系

売上総利益 ・経常利益率 ・(売上高)当期純利益率 ですね

( ^ω^)・・・ 売上総利益率低くね? 10%とか一桁はちょっと...

製造業全体での売上高総利益率は20%ぐらいだったはずなので、やったら低いです...

これは自動車部品業界は普通なのか、ブレーキという部品の業界では普通なのか、それとも単に曙ブレーキ工業の値が悪いだけなのか...気になりますね。(論点1)

 

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 次に売上高と営業利益

2015年~2017年あたりで売上が増加している反面、営業利益が低水準になってますね...
この辺りは上の記事にもあった2014年からの生産混乱によるものなんでしょう。
記事的には、生産混乱・GMの次期モデル向けブレーキ製品の失注としか書いてないので詳細を調べる必要がありそうです(論点2)

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続いて地域別売上比率の推移

2011年に急に日本と北米の売上の比率が逆転していますね。
調べてみると、2009年末にドイツのBoschの北米のブレーキ事業を買収したようです。
それで、売上比率に反映されたのは2010年3月期ではなく2011年3月期なのでしょう。
元々Boschの北米ブレーキ事業は営業赤字だったようだったで、それを買収して立て直すことで海外メーカーへのシェアを高める目論見だったようですが、2014年以降更に悪化させたということなのでしょう...f:id:ThirdRateCPA:20190916172753p:plain

セグメント(地域)別営業利益の推移と営業利益率の推移です

2019年3月期に黒なのはアジアだけ(ノ∀`)アチャー
先程から述べたとおり、2014年から北米の営業利益の赤がとてつもないことになっていますね。

営業利益率的には欧州のほうが致命的ですが、元々の売上が比較的すくないため北米のようなインパクトは少ないです。

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北米市場にフォーカスして売上高と営業利益率のグラフを作ってみました。

売上のピークに対して営業利益は下がるという最悪の状態ですね...
生産計画が杜撰だったのか、ここを乗り切れば北米でのシェアが上昇して利益も伸びるという見込みの元で利益度外視で受注したのか…(´ヘ`;)ウーム…

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次はROAROEです。
まぁ営業利益率等から察しがつくとは思いますが...
ROAのアベレージは-3%、ROEのアベレージは-19%でした。

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研究開発費や設備投資をみていきます。

研究開発費の対売上高比率はアベレージ4.7%でした。自動車・輸送用機器業界での売上高研究開発費比率は平均3%程なので比較的研究開発に多く投資していることが分かります。個人的にブレーキってもう技術が成熟しているイメージがあったのですが、そうでもないですね…

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最後に安全性の面ですね。私的整理という面ではこれが一番大事な指標かもしれません。北米での生産混乱が発生する前から30%切ってますね。常に負債による資金調達に依存していたことが伺えます。これはまだただの想像ですが、常に研究開発や設備投資に資金が必要でありそのために資金が必要になっていたのではないでしょうか。そして、負債依存が高いため常に利益を生み出し返済をしていかなければすぐに行き詰まってしまうという...という構造が見えてくる気がします。(論点3)

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以上で今回の財務分析は終了です。
今回で見つかった論点を調べていくと共に今回算出しなかった財務項目(インタレスト・カバレッジ・レシオとか)についても調べて行きたいと思います。