曙ブレーキ工業と事業再生ADRの研究#2
曙ブレーキ工業の北米市場での足跡を辿る
今日は曙ブレーキ工業の近年の北米市場での動向と北米での経済と自動車生産に関わるニュースを見ていきたいと思います。
年 |
曙ブレーキ工業での出来事 |
米国市場での出来事 |
2005年~2008年 (2006年3月期 ~2009年3月期) |
北米での生産拠点を3拠点から2拠点に集約 |
リーマンショックによる自動車生産台数の大幅な減少 |
2009年 (2010年3月期)
|
過剰生産能力最適化の為、独国自動車部品メーカーBoschから米国の事業の一部(生産2拠点、その他設備)を約17億円で取得。 |
09年の自動車生産台数がリーマンショック前の約半分に減少。(571万台) |
2010年 (2011年3月期) |
北米での売上高比率が50%に上昇。 顧客別売上割合のうちGMが7%から24%、Fordが3%から10%、Chryslerが2%から4%に上昇。 |
連邦準備準備理事会(FRB)による量的緩和政策により、経済が回復基調に。自動車ローン金利も低下。自動車の生産台数も徐々に回復する。 |
2011年 (2012年3月期) |
Boschから譲り受けた事業のうち不採算ビジネスの受注量の増加や現在費料の高騰により54億円の営業損失が発生、減損損失14億円を計上。 |
|
2012年 (2013年3月期) |
不採算ビジネスの生産中止、販売価格・仕入れ価格の見直しにより営業黒字に改善。 |
12年の自動車生産台数がリーマンショック発生以前の水準に回復(1034万台) |
2013年 (2014年3月期) |
北米自動車メーカーからの受注拡大。新製品の価格改定や合理化により年々に続き黒字。 |
13年の自動車生産台数は1107万台に増加 |
2014年 (2015年3月期) |
受注が急増し売上は増収、しかし過度な生産負荷による想定外コスト36億円(人件費18.5億円、輸送費9.5億円、修繕費3億円等)が発生し、32億円の営業赤字。 |
前年に続き14年の自動車生産台数は1166万台に増加 |
2015年 (2016年3月期) |
2014年に続き、生産混乱に伴う想定外コスト93億円(人件費36.5億円、輸送費36.5億円、修繕費10億円等)が発生し、112億円の営業赤字。その他114億円の減損損失を計上 |
前年に続き15年の自動車生産台数は1210万台に増加 |
2016年 (2017年3月期) |
2014年からの生産混乱は収束に向かい営業赤字は29億円に減少。 具体的には緊急輸送費は9.5億円(前年度比-27億円)に減少。しかしながら人件費は12億円増加しコンサルタント費用として21億円を計上。 |
前年に続き自16年の動車生産台数は1219万台に増加 |
2017年 (2018年3月期) |
営業利益を18億円計上。3期ぶりに営業黒字となる。 生産混乱による費用はなかったものの、一部の顧客より次期モデルの受注を逃し北米での売上高は前年度比-10% |
18年3月トランプ政権が鉄鋼分野に追加関税を発動。自動車メーカーは大きなコスト増。 |
2018年 (2019年3月期) |
最大の顧客であるGMの次期モデルの受注を逃す。北米での売上高は204億円減って前年度比-15% 減損損失136億円を計上。 |
※これらはすべて邦貨換算後の額であるため、為替レートの変動により額が変わっている。特に想定外コストの前年度増減はトータルでは整合していない。
簡単に流れをまとめるとこういう感じですかね...
個人的には、北米での生産拠点を最適化するためにBoschからむしろ事業を譲り受けるっていうのが理解に苦しむのですが...ここの詳しい経緯とか書いている記事が見つからないので追求ができない状態です。
あと、キャパを超えた受注について。
普通に考えるとキャパシティを超え続ける状態であれば受注しなきゃいいじゃん。ってなるんですが自動車業界だとそうもいかないんですかね...
一度部品のサプライヤーに選ばれてしまったらキャパシティを越えようがその車両の生産量に応じて責任を持って納品する的なルールがあるんでしょうか..もしかすると他社の部品組み込めるほど融通効かないのかな。(車弄ってる人間としてはそんなことないと思うんですが...)
自動車のメーカーとサプライヤーの契約がどういう感じなのかが気になりますが、生産能力のキャパオーバーの状態を維持して、売れば売るほど赤字を増えていくのをそのままにしているのは謎だと思います。