Reutersの株式ベータは一体何者なのか
Reuterの株式β
Bloomberg社が株式βの無料での公開を終了して以後、私はCAPM用いて株主資本コストを算定するためにReuter通信が提供している株式βを利用していました。
企業価値評価をやったことがある人は一度は参考にされたことがあるのではないのでしょうか?
(参考)株式β(ベータ):ある株式の市場全体の動きに対する個別株式の感度。
例えばβが1.5である株式は日経平均が10%上昇した場合15%上昇する。
事の発端
先日、なおころさんが作成された日経225データセットを購入しました。
折角購入したので、早速今日このデータを活用して株式βを求めるところから簡単に企業価値評価をできるEXCELシートを作ってみようと作業をしていたのですが...
事件が発生
自分が計算した株式βとReuterのHPに載っている株式βが0.3以上も乖離してるではないですか!*1*2
入江:0.725
Reuters:1.05
βが0.3も乖離すると株主資本コストの算定上かなり差が発生します。
(参考)
CAPM(株主資本コスト)=リスクフリーレート+株式β×リスクプレミアム
リスクフリーレート
リスクフリー(リスクがない)金融商品から得られるリターンのこと。一般的に長期国債のリターンが該当する
リスクプレミアム
ある金融商品のリスクを負担した際にその見返りとして得られるリターンのこと。金融商品のリターンからリスクフリーレートを引いたもの該当する
(このあたりはもっと簡単に説明しているブログや本が沢山あるのでそちらを参考にしてください)
なぜ株式βが乖離した?
同じ株式について計算した株式βが乖離する要因として考えられるのは、
- 証券市場全体を代表する値として使っている指標が違う
- βを計算する期間が違う
などが挙げられます。
ということで、それぞれ条件を変えてReutersのβの正体(計算条件)を突き止めていきました。
条件設定
- 市場全体を代表とする値として使う指標:日経平均、TOPIXの2つを設定
- 期間:5年3年の2つを設定
- 終点となる月:日本水産㈱の決算である3月(今回は2018年3月)と閲覧日の前月(2018年12月)の2つを設定
ちなみに、最初に計算したのは日経平均、5年、3月終点でした。
(なお、各月の株価や指数は月末の終値をベースとしているものとして条件としませんでした。)
結論
結論から言えば、ReutersのβはTOPIXを市場全体を代表とする値として使う指標とし、期間は5年で、終点となる月は閲覧日の前月であると考えます。
以下それぞれの条件下で計算した2019年1月現在の日本水産のβ値です。
Reuters:1.05
5年/決算日終点 | 5年/閲覧日前月終点 | 3年/決算日終点 | 3年/閲覧前月終点 | |
日経平均 | 0.72565 | 0.91642 | 0.77902 | 1.18343 |
TOPIX | 0.91956 | 1.05126 | 0.92846 | 1.25699 |
(表の出力の仕方がいまいち分からないマン...見づらくてごめんなさい)
感想
今回は指標が何者なのかを推察しただけでしたが、条件設定などなかなか楽しかったです。また、自分が普段使ってる指標がどのような条件の元で計算されているかって結構重要だと思います。(同じ名前でも計算の仕方が複数ある指標って結構ありますしね...)
というかReutersのβの算定方式ってどこにも載ってないんですかね?私が調べた限りは見つかりませんでしたが...
また、市場全体の動きを表す指標としてTOPIX(東証1部全体)を使うか日経平均(日本経済新聞社が選定した225社)を使うかで平均して0.2ほどβの値が異なるのには驚きました。これからCAPMを計算する際には両方を使って計算することも必要かもしれませんね...(笑
あとmsnマネーのβの算定方式も調べてみたいですね。
それでは今回はこの辺りで。ご覧いただきありがとうございました。ご意見やご指摘があればコメント欄から宜しくお願いいたします。